脱臼
外傷性脱臼の頻度
脱臼発生の頻度は部位によって異なりますが、年齢、性によっても差異があります。 外傷の受ける機会の多い青壮年男子、特に運動家、労務者に多発しています。 顎関節脱臼を除くと男性は女性の4〜5倍に及びます。 小児と老人の場合は、同じ外力が加わっても骨折を起こしてしまう場合が多いため、脱臼の頻度は比較的低くなります。 脱臼は捻挫の少ない関節に多く、肩関節に多発します。 肘関節、顎関節、指関節、肩鎖関節がこれに次ぎます。
Kronleinの表による各部位別脱臼頻度
- 顎関節 3.0%
- 肩鎖関節 2.5%
- 手関節 0.2%
- 股関節 2.0%
- 足関節 0.5%
- 脊椎 1.3%
- 肩関節 51.7%
- 中手指節関節 0.7%
- 膝蓋骨 2.2%
- 中足指説関節 0.7%
- 胸鎖関節 1.5%
- 肘関節 27.2%
- 指関節 2.0%
- 膝関節 1.7%
脱臼の発生機転
脱臼の発生は外力の強弱に左右されることはもちろんですが、関節の構造にも関係があります。 肩関節に頻発するのは、小さい関節窩に大きな骨頭を受け入れ、周囲の筋等の緊張によって保持されているからです。 脱臼は外力の作用により一方の関節端が関節包を損傷して、その裂口から逸脱して周囲の軟部組織内に突入したところで筋緊張で固定されます。 その発生機転は直達外力と介達外力に分けられます。
直達外力
直達外力による脱臼は比較的少なく、このような場合は骨折を起こしやすくなります。 外力の加わった反対側の関節包が破れて、さらに外力の持続するままに骨頭がそこから逸脱します。 したがって関節突起などの骨折を伴うことが多くあります。
介達外力
大部分の外傷性脱臼は介達外力によるものです。 関節に正常範囲を超える運動が強制されたり、あるいは突然に異常運動が強制された場合に起こります。 骨の一部や靭帯などが支店になって骨頭がてこの原理によって一定の方向に脱出します。
脱臼の症状
疼痛
自発痛として異常な緊張感があります。 そのほか圧痛、運動痛、介達痛がありますが、骨折の場合ほど激しくはありません。
腫脹および関節血腫
腫脹は軟部組織の損傷程度により生じます。 腫脹は骨折の際のように早急には現れず、著明でもありません。 脱臼により空虚になった関節腔内に関節血腫を生じ、出血が皮下に達すれば溢血斑を生じます。
機能障害
一定に固定され、疼痛に耐えてもわずかの可動性しかありません。
弾発性固定
脱臼特有の症状で、他動的に外部から力を加えて運動を試みると弾力性の抵抗があり、ある程度は動かすことができますが、力を緩めると元に戻ってしまいます。
変形
脱臼した関節の変形が起こったり、肩の脱臼であれば腕が伸びたり、あるいは縮んで見えます。